【駈歩完全ガイド】美しい姿勢で軽快に!駈歩をマスターするための詳細ステップと練習方法
駈歩(かけあし、canter)は、馬術において速歩(はやあし、trot)よりも速い、リズミカルな三拍子の歩様です。駈歩をマスターすることは、乗馬技術を向上させる上で非常に重要であり、馬との一体感を深める上で欠かせません。しかし、駈歩はバランス感覚や正しい姿勢が求められるため、初心者にとっては難しいと感じるかもしれません。この記事では、駈歩を安全かつ快適に楽しむために、正しい姿勢、扶助(ふじょ、aids)の使い方、練習方法などを詳しく解説します。
## 1. 駈歩の基本を理解する
まず、駈歩とはどのような歩様なのかを理解しましょう。駈歩は、以下の3つの段階で構成されています。
1. **開始:** 後肢の片方が地面を蹴り出す。
2. **推進:** 対角線上の前肢と後肢が同時に地面を離れる。
3. **着地:** 最初に地面に着地する肢と、それに続く対角線上の肢が着地する。
この一連の動きがリズミカルに繰り返されることで、駈歩が生まれます。馬は通常、右駈歩または左駈歩のいずれかをします。これは、馬がどちらの肢を最初に踏み出すかによって決まります。
## 2. 正しい姿勢を身につける
駈歩を美しく、そして馬に負担をかけずに乗るためには、正しい姿勢が不可欠です。以下のポイントを意識しましょう。
* **背筋を伸ばす:** 猫背にならないように、背骨をまっすぐに伸ばします。ただし、力んで硬直しないように注意しましょう。リラックスした状態を保ちつつ、自然なS字カーブを意識します。
* **骨盤を立てる:** 骨盤が後ろに倒れないように、軽く前傾させます。これにより、鞍との密着度が高まり、バランスが取りやすくなります。腹筋と背筋を意識して、骨盤を安定させましょう。
* **肩の力を抜く:** 肩が上がったり、前に出てしまったりしないように、リラックスさせます。肩甲骨を軽く寄せるイメージを持つと、自然と胸が開き、呼吸がしやすくなります。
* **肘を軽く曲げる:** 肘をピンと伸ばさず、軽く曲げておきます。これにより、馬の動きに合わせて柔軟に対応できるようになります。手綱を持つ手は、馬の口と常にソフトなコンタクトを保ちます。
* **膝と足首を柔らかく使う:** 膝と足首を硬直させず、馬の動きに合わせて柔軟に動かします。これにより、衝撃を吸収し、バランスを保つことができます。踵を軽く下げ、足全体で馬体を包み込むように意識しましょう。
* **目線は常に前へ:** 下を向かずに、進行方向をしっかりと見ます。これにより、自然と姿勢が良くなり、バランスも安定します。遠くを見るように意識すると、より効果的です。
これらのポイントを常に意識し、練習を重ねることで、自然と正しい姿勢が身につきます。
## 3. 駈歩の扶助(Aids)を理解する
扶助とは、騎手が馬に指示を伝えるための手段です。駈歩を指示するためには、以下の扶助を適切に使う必要があります。
* **脚(Legs):** 馬体を圧迫することで、推進力を促します。内側の脚は駈歩を指示する脚として、外側の脚はバランスを保つために使用します。内側の脚は、馬の肋骨のすぐ後ろに添え、軽く圧迫します。外側の脚は、内側の脚よりも少し後ろに添え、必要に応じて圧迫を強めます。
* **手綱(Reins):** 馬の頭の位置や方向を制御します。駈歩の際は、手綱を強く引きすぎないように注意しましょう。馬の口にソフトなコンタクトを保ちつつ、必要に応じて軽く合図を送ります。内方姿勢を保つために、内側の手綱をわずかに短く持ちます。
* **体重(Weight):** 騎手の体重移動によって、馬のバランスを調整します。駈歩の際は、内側の坐骨にわずかに体重を乗せることで、駈歩を促します。ただし、過度な体重移動は馬の負担になるため、注意が必要です。
* **声(Voice):** 声を使って、馬に指示を伝えることができます。例えば、「駈歩」という言葉を使って、駈歩を指示することができます。ただし、声による指示は、他の扶助と組み合わせて使用することが重要です。
これらの扶助を組み合わせることで、馬に駈歩を指示し、コントロールすることができます。扶助は、馬とのコミュニケーション手段であり、馬の性格や訓練状況に合わせて、適切に使い分けることが重要です。
## 4. 駈歩の練習方法
駈歩の練習は、段階的に進めることが大切です。焦らず、基礎からしっかりと練習しましょう。
### 4.1 速歩(Trotting)での準備
駈歩の練習を始める前に、速歩でしっかりと準備運動を行いましょう。速歩で馬のバランスを整え、騎手の姿勢を安定させることが重要です。
* **正反撞(Rising Trot):** 正反撞は、速歩のリズムに合わせて、立ち上がったり座ったりする乗り方です。これにより、騎手のバランス感覚が養われ、馬の背中への負担を軽減することができます。
* **軽速歩(Sitting Trot):** 軽速歩は、鞍に座ったまま速歩に乗る乗り方です。これにより、騎手の姿勢が安定し、馬との一体感を深めることができます。軽速歩では、背筋を伸ばし、骨盤を立てて、馬の動きに合わせて柔軟に対応することが重要です。
* **巻き乗り(Circles):** 馬場馬術の基本となる運動で、馬を円を描くように運動させます。これにより、馬のバランスを整え、柔軟性を高めることができます。巻き乗りを行う際は、内方姿勢を保ち、馬が円の内側に倒れ込まないように注意しましょう。
* **斜め手前変換(Diagonal Change):** 馬場馬術の基本となる運動で、馬場を斜めに横断し、反対側の壁まで移動します。これにより、馬の方向転換能力を高め、バランスを調整することができます。斜め手前変換を行う際は、馬がまっすぐに進むように、手綱と脚を使って誘導します。
これらの速歩の練習を通して、馬と騎手がお互いに慣れ親しみ、スムーズな駈歩への移行を目指しましょう。
### 4.2 発進(Starting the Canter)
速歩で十分に準備運動を行った後、いよいよ駈歩の発進です。以下の手順で行います。
1. **合図の準備:** 馬に駈歩の合図を送る前に、速歩のリズムを安定させます。馬がリラックスし、集中している状態であることが重要です。
2. **内側の脚:** 内側の脚を馬の肋骨のすぐ後ろに添え、軽く圧迫します。この時、脚の位置がずれないように注意しましょう。
3. **外側の脚:** 外側の脚を内側の脚よりも少し後ろに添え、必要に応じて圧迫を強めます。これにより、馬の推進力を促し、駈歩への移行をサポートします。
4. **手綱:** 手綱は、馬の口にソフトなコンタクトを保ちつつ、内方姿勢を促すために、内側の手綱をわずかに短く持ちます。外側の手綱は、馬のバランスを保つために使用します。
5. **体重:** 内側の坐骨にわずかに体重を乗せることで、駈歩を促します。ただし、過度な体重移動は馬の負担になるため、注意が必要です。
6. **声:** 必要に応じて、「駈歩」という言葉を使って、駈歩を指示します。
7. **発進:** これらの扶助を同時に行うことで、馬が駈歩を発進します。発進したら、すぐに姿勢を整え、バランスを保ちましょう。
駈歩の発進がうまくいかない場合は、焦らずに速歩に戻り、再度合図を送ります。根気強く練習することで、徐々にスムーズな発進ができるようになります。
### 4.3 駈歩中の姿勢と扶助
駈歩中は、正しい姿勢を保ち、扶助を適切に使うことが重要です。以下のポイントを意識しましょう。
* **姿勢:** 背筋を伸ばし、骨盤を立てて、肩の力を抜きます。肘を軽く曲げ、膝と足首を柔らかく使い、目線は常に前へ向けます。これらのポイントを意識することで、バランスが安定し、馬の動きにスムーズに対応することができます。
* **脚:** 内側の脚は、馬の推進力を促すために、軽く圧迫します。外側の脚は、バランスを保つために使用します。必要に応じて、圧迫を強めることで、馬の反応を促します。
* **手綱:** 手綱は、馬の口にソフトなコンタクトを保ちつつ、方向転換や速度調整を行います。手綱を強く引きすぎないように注意しましょう。
* **体重:** 内側の坐骨にわずかに体重を乗せることで、駈歩をサポートします。ただし、過度な体重移動は馬の負担になるため、注意が必要です。
これらのポイントを意識しながら、駈歩中の姿勢と扶助を調整することで、馬との一体感を深め、より快適な駈歩を楽しむことができます。
### 4.4 停止(Stopping the Canter)
駈歩を停止する際は、以下の手順で行います。
1. **合図の準備:** 馬に停止の合図を送る前に、駈歩のリズムを徐々に遅くします。馬がリラックスし、集中している状態であることが重要です。
2. **手綱:** 両手の手綱を均等に引き、馬の進行を止めます。手綱を強く引きすぎないように注意しましょう。
3. **体重:** 体重を後ろにかけ、馬のバランスを調整します。これにより、馬がスムーズに停止することができます。
4. **脚:** 脚を使って、馬の推進力を抑えます。内側の脚は、馬の肋骨のすぐ後ろに添え、軽く圧迫します。外側の脚は、内側の脚よりも少し後ろに添え、必要に応じて圧迫を強めます。
5. **声:** 必要に応じて、「停止」という言葉を使って、停止を指示します。
6. **停止:** これらの扶助を同時に行うことで、馬が停止します。停止したら、すぐに手綱を緩め、馬を褒めてあげましょう。
駈歩の停止がうまくいかない場合は、焦らずに速歩に戻り、再度合図を送ります。根気強く練習することで、徐々にスムーズな停止ができるようになります。
## 5. よくある間違いと解決策
駈歩の練習中に、よくある間違いとその解決策を紹介します。
* **バランスが崩れる:** バランスが崩れる原因は、姿勢が悪い、扶助が適切でないなどが考えられます。正しい姿勢を意識し、扶助を丁寧に使いましょう。必要に応じて、インストラクターにアドバイスを求めることも有効です。
* **馬が駈歩を発進しない:** 馬が駈歩を発進しない原因は、扶助が弱い、馬が理解していないなどが考えられます。扶助を強化し、馬に明確な合図を送りましょう。また、馬の性格や訓練状況に合わせて、扶助を調整することも重要です。
* **駈歩がスムーズでない:** 駈歩がスムーズでない原因は、リズムが一定でない、姿勢が悪いなどが考えられます。速歩でリズム感を養い、正しい姿勢を意識しましょう。また、馬の背中の動きに合わせて、柔軟に対応することも重要です。
* **手綱を強く引きすぎる:** 手綱を強く引きすぎると、馬の口に負担がかかり、反発を招く可能性があります。手綱は、馬の口にソフトなコンタクトを保ちつつ、必要に応じて軽く合図を送るようにしましょう。
* **脚を使いすぎる:** 脚を使いすぎると、馬が混乱し、反応が悪くなる可能性があります。脚は、必要な時に必要なだけ使うようにしましょう。また、脚の位置や圧迫の強さを調整することも重要です。
これらの間違いに気づき、改善することで、よりスムーズで快適な駈歩を楽しむことができます。
## 6. 安全のための注意点
駈歩は、ある程度の技術と経験が必要な運動です。安全のために、以下の点に注意しましょう。
* **インストラクターの指導を受ける:** 駈歩の練習は、必ず経験豊富なインストラクターの指導のもとで行いましょう。インストラクターは、個々のレベルに合わせた指導を行い、安全な練習をサポートしてくれます。
* **適切な服装を着用する:** 乗馬用のヘルメット、ブーツ、グローブなどを着用し、安全を確保しましょう。特に、ヘルメットは、落馬時の頭部保護に不可欠です。
* **馬の状態をよく観察する:** 馬の体調や気分をよく観察し、無理な練習は避けましょう。馬が疲れている場合や、体調が悪い場合は、練習を中止することも重要です。
* **周囲の状況に注意する:** 馬場内や周囲の状況に常に注意し、他の騎手や馬との衝突を避けるようにしましょう。特に、複数人で練習する場合は、互いに声をかけ合い、安全を確保することが重要です。
* **無理をしない:** 自分のレベルを超えた練習は避け、徐々にステップアップしていきましょう。無理な練習は、怪我の原因になるだけでなく、馬との信頼関係を損なう可能性もあります。
これらの注意点を守り、安全に駈歩の練習を楽しんでください。
## 7. まとめ
駈歩は、乗馬の醍醐味の一つであり、馬との一体感を深める上で欠かせない技術です。この記事では、駈歩の基本、正しい姿勢、扶助の使い方、練習方法などを詳しく解説しました。これらの知識を参考に、安全かつ快適な駈歩を楽しんでください。継続的な練習と、馬とのコミュニケーションを通して、より高度な乗馬技術を身につけ、素晴らしい乗馬ライフを送ってください。