【第三者視点】読者を惹きつける三人称小説の書き方:ステップバイステップガイド
小説を書く際、視点の選択は非常に重要です。一人称、二人称、そして三人称と、様々な視点がありますが、今回は、三人称に焦点を当て、読者を惹きつける三人称小説の書き方を徹底的に解説します。
## 三人称とは?
三人称とは、物語を「彼」「彼女」「彼ら」といった第三者の視点から語る方法です。一人称のように主人公の視点に限定されず、かといって全知全能の神の視点ほど自由度が高すぎるわけでもありません。程よい距離感で物語を展開できるため、多くの小説で採用されています。
### 三人称の種類
三人称には、大きく分けて「三人称限定視点」と「三人称全知視点」の2種類があります。
* **三人称限定視点:** 特定の登場人物の視点に限定して物語を語ります。読者はその人物の思考、感情、知覚を通して物語を体験します。他の登場人物の内心は直接的には語られず、行動や言動から推測するしかありません。これにより、読者は登場人物に感情移入しやすく、臨場感のある物語を体験できます。
* **三人称全知視点:** 神の視点とも呼ばれ、物語の登場人物全員の思考、感情、行動を自由に語ることができます。物語全体の構造を俯瞰的に見ることができ、伏線を張ったり、複数の視点を切り替えたりするのに適しています。ただし、登場人物への感情移入がしにくくなる可能性があるため、注意が必要です。
## 三人称で書くメリット・デメリット
### メリット
* **客観的な視点:** 物語を客観的に語ることができ、読者は冷静に状況を判断できます。これにより、サスペンスやミステリーなど、読者に推理させたい物語に適しています。
* **自由度の高さ:** 登場人物の行動や感情を自由に描写できるため、物語の展開に幅を持たせることができます。複数の登場人物の視点を切り替えることで、物語に奥行きを出すことも可能です。
* **感情移入のしやすさ(限定視点の場合):** 特定の登場人物の視点に限定することで、読者はその人物に感情移入しやすくなります。これにより、読者は物語の世界に入り込み、登場人物と共に喜んだり、悲しんだりすることができます。
### デメリット
* **感情移入のしにくさ(全知視点の場合):** 全知視点では、登場人物の感情を説明的に語ることが多いため、読者が感情移入しにくくなる可能性があります。登場人物の内面を深く掘り下げたい場合は、限定視点の方が適しているかもしれません。
* **視点の混乱:** 複数の登場人物の視点を頻繁に切り替えると、読者が混乱する可能性があります。視点を切り替える際は、明確な区切りを設け、読者が迷わないように配慮する必要があります。
* **一人称よりも難しい?:** 一人称は、自分の視点から物事を語るため、比較的容易に書くことができます。しかし、三人称は、自分以外の人物の視点から物語を語る必要があり、客観性と感情移入のバランスを取るのが難しい場合があります。
## 三人称小説を書くためのステップバイステップガイド
### ステップ1:視点の選択
まず、どの視点(限定視点か全知視点か)で物語を語るかを決定します。物語のジャンル、テーマ、登場人物の性格などを考慮して、最適な視点を選びましょう。
* **登場人物の内面を深く掘り下げたい場合:** 限定視点を選ぶのがおすすめです。読者は特定の登場人物の思考や感情を通して物語を体験するため、感情移入しやすくなります。
* **物語全体の構造を俯瞰的に見せたい場合:** 全知視点を選ぶのがおすすめです。複数の登場人物の視点を切り替えたり、伏線を張ったりするのに適しています。
### ステップ2:登場人物の深堀り
物語を語る上で、登場人物の性格、過去、価値観などを深く理解することが重要です。特に、限定視点の場合は、視点となる登場人物の内面を徹底的に掘り下げましょう。どのような考え方をするのか、どのような感情を抱くのか、過去にどのような経験をしてきたのかなどを明確にすることで、物語にリアリティが生まれます。
* **バックストーリーの作成:** 登場人物の過去の出来事や経験を詳細に記述します。これにより、登場人物の行動や言動に説得力を持たせることができます。
* **性格特性の明確化:** 登場人物の性格特性(長所、短所、癖など)をリストアップします。これにより、登場人物の個性を際立たせることができます。
* **価値観の定義:** 登場人物が何を大切にしているのか、どのような価値観を持っているのかを明確にします。これにより、登場人物の行動の動機を理解しやすくなります。
### ステップ3:語り口調の決定
物語の雰囲気に合わせて、語り口調を決定します。硬い文体、柔らかい文体、ユーモラスな文体など、様々なスタイルがあります。また、視点となる登場人物の性格に合わせて、語り口調を変えることも可能です。例えば、知的で冷静な人物を視点とする場合は、論理的で客観的な語り口調にするのが適切です。
* **文体の選択:** 使用する単語、文法、リズムなどを考慮して、最適な文体を選びます。物語のジャンルやテーマに合わせて、文体を調整しましょう。
* **比喩表現の活用:** 比喩表現(直喩、隠喩、擬人化など)を効果的に活用することで、物語に深みと彩りを与えることができます。
* **情景描写の重視:** 五感を刺激するような情景描写を取り入れることで、読者は物語の世界に入り込みやすくなります。
### ステップ4:視点の維持
三人称限定視点の場合、視点となる登場人物の思考、感情、知覚を通して物語を語る必要があります。視点がぶれて、他の登場人物の内心を語ってしまったり、作者自身の考えを語ってしまったりしないように注意しましょう。視点を維持することで、物語に一貫性が生まれ、読者は物語の世界に没頭することができます。
* **内心の描写:** 視点となる登場人物の思考、感情、記憶などを詳細に描写します。これにより、読者は登場人物の視点を通して物語を体験することができます。
* **行動の描写:** 視点となる登場人物の行動や言動を客観的に描写します。行動や言動を通して、登場人物の性格や感情を表現しましょう。
* **情景の描写:** 視点となる登場人物が見ている風景、聞こえている音、感じている匂いなどを描写します。これにより、読者は登場人物と同じ世界を体験することができます。
### ステップ5:視点の切り替え(全知視点の場合)
三人称全知視点の場合、複数の登場人物の視点を切り替えることができます。視点を切り替える際は、読者が混乱しないように、明確な区切りを設けましょう。例えば、段落を変えたり、章を分けたりするなどの方法があります。また、視点を切り替える理由を明確にすることで、物語に深みを与えることができます。
* **視点切り替えのタイミング:** 視点を切り替えるタイミングを慎重に検討します。物語の展開に合わせて、最適なタイミングで視点を切り替えましょう。
* **視点切り替えのサイン:** 読者が視点の切り替えに気づきやすいように、明確なサインを設けます。例えば、「その時、彼女は…」のような表現を使うと効果的です。
* **視点切り替えの理由:** なぜ視点を切り替えるのか、その理由を明確にすることで、物語に深みを与えることができます。例えば、異なる視点から同じ出来事を語ることで、物語に多角的な解釈を促すことができます。
### ステップ6:客観性と感情移入のバランス
三人称小説を書く上で、客観性と感情移入のバランスを取ることが重要です。客観的な視点を維持しながらも、読者が登場人物に感情移入できるように、内面の描写を工夫しましょう。また、感情的なシーンでは、過剰な表現を避け、抑制の効いた文章で読者の感情を揺さぶるように意識しましょう。
* **情景描写の活用:** 情景描写を効果的に活用することで、読者の感情を間接的に揺さぶることができます。例えば、悲しいシーンでは、雨や曇り空などの情景描写を用いると効果的です。
* **行動描写の重視:** 行動描写を通して、登場人物の感情を表現することができます。例えば、怒っている登場人物は、物を投げつけたり、声を荒げたりするでしょう。
* **対話の活用:** 対話を通して、登場人物の感情や人間関係を表現することができます。感情的な対話は、読者の感情を直接的に揺さぶる効果があります。
### ステップ7:推敲と修正
書き終えたら、必ず推敲と修正を行いましょう。文章の誤り、視点のずれ、不自然な表現などを修正することで、物語の完成度を高めることができます。また、第三者に読んでもらい、客観的な意見を聞くことも有効です。
* **文章校正ツールの利用:** 文章校正ツールを利用して、文法やスペルミスをチェックします。
* **声に出して読む:** 声に出して読むことで、文章のリズムや流れを確認することができます。
* **第三者の意見を聞く:** 信頼できる人に読んでもらい、客観的な意見を聞きましょう。改善点が見つかるかもしれません。
## より魅力的な三人称小説を書くためのヒント
* **具体的な描写:** 抽象的な表現を避け、具体的な描写を心がけましょう。例えば、「美しい景色」と表現するよりも、「太陽に照らされた金色の麦畑が、風に揺れている景色」と表現する方が、読者の想像力を刺激します。
* **五感を意識する:** 視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚といった五感を意識して描写することで、物語にリアリティを与えることができます。例えば、「甘い香りが漂ってきた」と表現するよりも、「焼きたてのパンの甘い香りが、鼻腔をくすぐった」と表現する方が、読者はより具体的にイメージすることができます。
* **比喩表現を効果的に使う:** 比喩表現(直喩、隠喩、擬人化など)を効果的に使うことで、物語に深みと彩りを与えることができます。ただし、比喩表現を使いすぎると、文章がくどくなる可能性があるため、注意が必要です。
* **リズムを意識する:** 文章のリズムを意識することで、読者は物語をより心地よく読むことができます。句読点の使い方、文の長さなどを工夫して、リズムの良い文章を目指しましょう。
* **読者を意識する:** 読者がどのような情報を求めているのか、どのような物語を読みたいのかを常に意識して書きましょう。読者の期待に応えることで、読者は物語に満足し、あなたのファンになるでしょう。
## まとめ
三人称小説は、客観的な視点と自由度の高さが魅力ですが、視点の維持や客観性と感情移入のバランスなど、注意すべき点も多くあります。今回紹介したステップバイステップガイドとヒントを参考に、読者を惹きつける三人称小説を書いてみてください。練習を重ねることで、三人称の書き方をマスターし、あなたの物語をより魅力的なものにすることができるでしょう。
三人称は奥が深く、表現の幅が広いので、ぜひ色々な作品を読んで、自分なりの書き方を見つけてみてください。